彼はぎしぎしとあちこちが痛む身体を無理やりに持ち上げると、至極不快そうに後頭部をかきむしった。それにあわせて左耳に着けられた星型のイヤリングが揺れ、赤い髪の毛が数本抜け落ちる。
それから重い身体を簡素な木組みのベッドから引き摺り下ろすと、ろくに遮光も出来ないカーテンを開け放ってしばらく外の光景を眺めていた。
 そこにあるのは、夜明けを迎えたばかりの青い空。そして、その下には切り立った崖によって隔てられた草原が広がっている。彼――流浪の剣士アティスは、グラスラク山脈の頂近くで旅人を待つ旅篭町、エディックにいた。
「…………」
 雨風を防げるだけましと考え格安の値段で選んだ宿だったが、やはり多少の無理をしてでももう少し上等の旅籠に泊まるべきだったようだ。身体の節々がひどく痛む。もちろん、熟睡できたはずもない。これならばいっそのこと、普段通り野宿をしたほうが幾分かましかもしれなかった。
 とはいえ、やはり腹は減るものである。あまり期待は出来そうにないが、彼は朝食を求めて部屋を出た。まあ、やはり期待に沿うものが朝の食卓に並ぶことはなかったが。
 それは非常に陳腐なパンケーキが二枚と、水の入った杯が並ぶだけの、過ぎるほどに貧相なものだった。彼は顔をしかめたものの、不満を口には出さず、ひとまずそれらを平らげた。
 生憎と食うに事欠くような人生を送ってきた彼は、こんなものでも不味いと思うことなく食べることの出来るだけの味覚を持ち合わせているのだった。とはいえ、それが常にいいことではないことは明らかである。
「……親父」
「へ……へぇ、なんでがしょ」
 猫背の貧相な男は呼びつけられて、ひどく怯えながら彼の後ろに立った。とがめられることを恐れているのだろう。
「……この町は、旅籠に随分と差があるんだな」
 視線を男に向けることなく、彼は言った。棘を一切隠そうとしない剣呑な雰囲気に、男は小さい身体をさらに縮めてしどろもどろに答える。
「先祖代々、ここでやらしてもらって、ますけんど……やっぱ、長年積もった、その……もんがですね……。ほ、ほら、ち、塵も積もればなんとやら、ですよ……」
「……そうか……」
 す、と彼は目を細めた。思うところがあるのか、彼はしばらくそのまま、大して座り心地の良くない椅子に腰掛けたままぼんやりとどこか遠いところを見つめていた。
 後ろに着いた男は彼が何も言わないので、何か話題を出さなければならないと思ったのだろう。聞かれてもいないのに、関係のないことを喋り始めた。
「ま、まァ、その、そんなワケで、お金がありませんで……実はゆんべ、娘を……」
 男の言葉を聞いた瞬間、彼は細めていた目をしかと見開いた。だが、すぐに再び物憂げな眼に戻ると。
「……身売りしたのか」
 ゆっくりと立ち上がりながら、男のほうに振り返った。
 ようやく反応があったからか、男はやけに饒舌になっていらぬことをぺらぺらと喋り出す。だがアティスはその言葉を手で遮ると、そのまま真っ直ぐ昨夜の閨へ向かった。ぴしゃりと会話を拒絶された男は、ぶつぶつと誰にともなく愚痴をこぼすのだった。

 グラスラク山脈は、世界に名高い峻険な岩山がいくつも連なる天嶮である。しかし、その随所には山をくりぬいて作られた坑道が設けられており、危険な山道を大変な思いをして登らずとも、それらを使えば心得のない者も無難に山を越えることができる。もちろん、中には自ら進んで山道を行く物好きもいるが。
 とはいえ、その坑道をいつ、誰が、どのようにして造ったのかは定かではない。この山を管理するアルセルン王国は千年の歴史を持つ由緒ある国で、今世界に数多ある国家の中では、メルシェン教国に次ぐ歴史を持つ。
 だがこの国の歴史書にも、坑道を掘ったという記録は残っていない。それどころか、国の勃興が相次いだ時期の記録にすら既にその存在が明記されているのだ。どれほど古いものなのか、それを知る者はもはやいない。
 だが、そんなことはアティスにとってはどうでも良いことだ。定点ごとに設置された炎霊石のランプによってほぼ全ての場所において適度な明るさが保たれている道を歩く彼の瞳には、周囲の景色は映っていない。彼が見ているのは、道の先だけだ。
 あえてまだ何かを付け加えるとするならば、魔物。それらを含めることは問題ないだろう。
 だが、普段ならば旅の者を襲う魔物達が彼にはあまり手を出そうとしない。それどころか、一部の魔物に至っては彼に並んで歩こうとする者もいた。一方彼のほうも、そんな友好的な魔物には決して手は出さない。ただ、襲い掛かってきた者に限って容赦なく斬り捨てるだけだ。
「…………?」
 ふと、彼は悲鳴を聞いた気がしてY字路の分岐点で立ち止まった。基本的にここの坑道は一本道だが、たまにここのように分かれ道があって行き止まりになっていることがある。その片方から、よく通る質の声が聞こえた気がしたのだ。
「…………」
 マントの下で腕を組んで彼はしばし考える。だが、この二つの道どちらを行けば外へ出られるのか判らない以上、別段どちらを選んでも多少時間を浪費する程度の損失にしかなるまいと考え、彼は悲鳴が聞こえた――と思しき――方へと足を向ける。
 その先で彼が見たものは、今や魔物が跋扈するようになった現在においては、特に珍しいものではなかった。数匹のオークが、逃げ回る少女を喰らい尽くそうと追い回す姿は、この坑道に限らず、また洞窟の内外を問わず、どこでも起こりえる光景だ。
 あまり複雑でない坑道の中を、裸足で走る少女。山肌を削って造られた坑道の道はごつごつとしており、そこを踏みしめる幼い足からは、血がにじみ出ていた。またその服装は大層粗末で、丁寧に手入れをすれば美しく流れる水のような青髪は、ばさばさに乱れている。
 そんな彼女を追い回すオーク達は、恐らくその状況をも楽しんでいる。人間の逃げ回る姿、恐怖する姿に至上の歓びを覚えるという性質は、多少の知性を持つ魔物に多く見られるものなので、それ自体はこれまた珍しいことではない。
 だが、そうした彼らだけが楽しい時間が長くは続かなかったという点においては、割合に珍しいことと言えるかもしれない。
「きゃっ!」
 しばらくその様子を見ていたアティスが、オークたちと少女とを遮る形で、間に割り込んだのである。少女が、恐らくは無意識のうちだろう、アティスの足へすがりついてくる。
「…………」
「きゃ……?!」
 彼はその少女を無言で隅にどかしながら、静かに腕を組み魔物たちを見据えた。地獄の底を見てきたような暗い瞳だった。
 だが、もちろんその行為はオークたちにしてみれば喜ばしいものでない。彼らは、その深緑のマントに身を包む赤髪の男に、一斉に襲いかかった。
 ――否。襲い掛かろうとした。彼らは赤髪の男に……アティスに、触れることすらできなかったのだ。
 彼らが殺意をあらわにしたその瞬間、ひゅ、とかすかに風を斬る音が鳴り、それに続いて肉と骨を断ち斬る壮絶な音が坑道に響き渡った。
 マントが大きく翻り、その下から現れたルーンブレイドがまるで意思を持つ生命のように、しなやかに空を薙ぎ払う。その軌跡は一でありながら十であり、十にして一であった。幾重にも斬撃が奔り、オークたちの身体は一瞬のうちに細切れとなっていく。そして、そのまま自らの死を悟ることなく、彼らはそれなりのコインの山となった。
「……喧嘩は相手を見てすることだな……」
 消滅したオークたちに一言残すと、アティスは剣を鞘へと戻す。かしん、という音がやけに大きく響いた。
「……大丈夫か?」
「…………。……え? あ、う、うん……なんとか……」
 アティスに声をかけられた少女は、しばらくぽかんとしていたが、なんとか正体を取り戻してこくこくと頷く。
「…………」
 しかし、その様子にアティスは何か言葉をかけることはなく、ならば良い、とばかりに、きびすを返した。そして再び、彼は出口を求めて歩き出す。
 その深緑の後姿を少女はぼう、と眺めながら、しばらく唖然としていたが、やがて立ち上がると、その背中へ向かって走り出した。

「ねー、待ってよー! 待ってってばー!」
 山道を無言で下るアティスの後ろから、先ほどの少女が大きな声を上げながら追いかけてくる。彼はあまり速く歩いているわけではないが、二人の身長差はかなりあるため、少女のほうは必然的に小走りの形となっていた。
「…………」
「ねえ待ってよ! ねえったら!」
 痺れを切らしたのか、少女は彼にすがりついた。それでも彼は無言で少女を引き剥がす。そして少女は、それでもめげずに彼を追いかける。先ほどからこれが繰り返されていた。
 彼女は最初、まるで反応を示さないアティスに、ルゥと名乗った。だがそれにすら彼は言葉を返さなかった。それからしばらくはルゥも色々と話しかけていたが、やがて彼の気を引くに値すると思われる材料が尽きたのか、今ではもはや呼びかけるだけだ。
「……もう!」
 そして、もはや声をかけることすら億劫になったのか、口を閉ざした。そのまま、アティスの後ろにつき従う。。
 ルゥは、大体十五くらいだと言った。顔は泥と埃と垢にまみれているが、その素地は決して悪くはない。今でそうなのだから、ましてや汚れを落とし小奇麗な衣装を纏い、出来れば装飾の一つでも身に纏っていれば相当な美少女であるだろう。
 けれども、この荒んだ時代に貧民でありながら美しいことは、手放しに喜べるものではない。事実、彼女はたまたま山越えをしていたキャラバンに身売りされ、そしてそこを逃げ出してきたのだと、アティスに語った。
 だが、そのような身の上話にもアティスは興味を示さなかった。正確には、うっそりとした暗い瞳を一度だけ向けたが、何かを口にすることはなかった。ただただ黙々と、歩き続けるだけ。
 けれども、本当に興味を示していないわけではない。興味というか、思うところはある、というべきか。ただ、それを口にしないだけなのだ。
 世界をさすらい、吟遊詩人たちに謳われるほどの剣士である彼の生い立ちを知るものはいないが、彼自身の脳裏には、全てを失ったときの記憶が、確かに刻まれている。その感覚は、記憶は、決して薄れることはなく、ましてや消えることなどありえないのだ……。
 ふと、彼は足を止めた。死臭が漂っているのを感じたのだ。急に彼が止まったので、ルゥが何事かとその後ろから顔を覗かせてくる。
「……ここか」
 その臭いの元をたどって、アティスは山道の脇、崖となっているところから顔を出し、下に目を向けた。ルゥもそれに続く。
「……ひっ!?」
 そこには、無残な姿に成り果てた何十人もの人間達がいた。正確には、人間だったものが何十体も、転がっている。その余りの光景に、ルゥが思わず息を呑んだ。
「……昨日発ったキャラバンのようだな……。この感じは……魔物ではないな……?」
 手近で、枯れ木に引っかかっていたターバンの男の屍骸に残る傷跡を見て、アティスはひとりごちた。その言葉は、彼が魔物や人といった区別なく、数多の修羅場を潜り抜けてきた強者であることを物語っている。
 グラスラク山脈には、まだ凶悪な魔物は住み着いていない。ここに住む魔物たちは、爪や牙、棍棒といったものしか持ち合わせていないのだ。そんな彼らには、一文字にまっすぐ開いた刀傷を与えることはできないはずなのだ。
 そんな死体の下には、山になった遺体、もはや原型を留めていない馬車や、キャラバン隊員が身に着けていたであろう装飾品がごっそり姿を消しているのも見える。これからも、魔物による襲撃ではないことが伺える。
 光物を集める習性を持つ魔物もいるにはいるが、そんな魔物はやはりこの山にはいない。いたとしても、食生活の違う人間の食料や、香辛料の類まで根こそぎ消えているのは、やはり人間の仕業と見ていいだろう。
 普段まったくと言ってもいいほど感情のないアティスの瞳が、この時初めて輝いた。ただしその輝きはどこまでも黒く、赤い瞳に宿った炎はまるで地獄の業火のようだった。
「……近くに蛆虫どもが潜んでいるようだな……。これだから人間は……」
 そうつぶやいた彼の言い方は、まるで自分が人間ではないような口ぶりだった。それからゆっくりと立ち上がると、彼は隣で放心状態のルゥに目を向ける。
「……山賊に襲われたくなければ、離れるな。……ただしその場合、悪魔の所業を見ることになるが……その覚悟だけはしておくんだな……」
 そしてそれだけ言うと、再び歩き始めた。
 そんな彼の姿をしばらくルゥは見つめていたが、やがて慌ててその後ろに追いすがった。が、先ほどまでの元気がそこになかったのは、言うまでもない。
 そこからさして進んでいない地点で、アティスが急に足を止めた。こそこそとその後ろに着いて来ていたルゥが、後姿にぶつかって尻餅をつく。
 刹那、彼のすぐ鼻先を矢がかすめた。そしてそれを合図とするかのように、周囲から雨かあられのごとく、無数の矢が彼めがけて降り注ぐ。
「……ふん」
 だが、その矢が彼らに届くことはなかった。それらは全て、彼の少し手前で、まるで障壁にでも阻まれたかのようにして、ばらばらと地に落ちたのである。陽光を受けて、ルーンブレイドが、そして星型のイヤリングが煌いていた。
 やがて、周囲からは鬨の声が上がった。その余りのすさまじさにルゥが身体をすくめる。それを横目で見ると、アティスはため息混じりに一言告げた。
「……そこでじっとしていろ」
「……う、うん……」
 返事と、全身を丸くして、まぶたを閉じて耳を塞ぐルゥの姿を確認したアティスは、眼前に迫ってきていたいかにも柄の悪そうな男の歩みをそこで止めた。アティスの一歩手前で、男が両腕両脚を失って倒れこむ。
 直後、アティスはまるで風を渡る鳥のように地を滑った。そこに無駄な動きは一切なく、また容赦も一切なかった。滑らかに、そして高速で走りながら彼は剣を奔らせる。あまりにも素早いその動きは、目で追うことすら難しい。
 それに合わせて、ひゅひゅ、と剣が空を斬る音だけが響く。幾重にも重なった残像が彼を追い、それに従って剣の軌跡が残った。それは天を駆ける雷光のようであり、またそれを見せる彼の赤い髪が相まって、赤い稲妻のようにも見えた。
 そして、全ては終わる。
 辺りが静かになった。先ほどまでまるで戦場を思わせるほどに緊迫していた空気はもはやひたすらに静寂で満たされている。
 土がむき出しになっていたはずの山道だが、今やその土を見ることは難しい。累々と築かれた死体が、それを覆い隠してしまっていた。
 もはや自分に敵意を向ける存在がいないことを確認すると、アティスはマントで剣の血糊を拭い去る。人間の肉を切り裂いたその剣は、いかな魔法による防護がかかっているとはいえ、早めに鍛冶屋に駆け込んだ方がよさそうだった。
「……あ……あ、あ……」
 そんなアティスを見つめて、ルゥが声にならない声を上げて、へたり込んでいた。無理もない。
 今、鞘に剣を戻すアティスの姿は、山となった屍の上に立つ魔物と言っても過言ではない。おまけに暮れ始めた赤い日差しも手伝い、すべての赤がより破壊的な色彩を放っていた。
 アティスの、深緑色だったマントはすっかり血で汚れ、彼の赤い髪もところどころに血と思しきどす黒いものがべっとりとついていた。何より、返り血で染まったその感情のない顔などは、まさしく魔物のようである。ただ一つ、少しも赤く染まっていない星型の青いイヤリングだけが、まるで人間の涙のように寂しく輝いているだけで。
 アティスは、呆然と自分を見つめるルゥをしばらく見つめていた。沈黙がそこを支配するが、やがて、彼の方から口を開く。
「……これで判っただろう」
 不意に投げかけられた言葉に、ルゥはびくりと身体を震わせた。
「俺は、人間を斬ることを厭わない」
 そして続いた言葉に、今度はゆっくりと後ろに下がる。魔物を見つめるような怯えた青い目が、人の姿をした赤い悪魔の瞳に映った。けれど、その色は、悲哀に満ちた夜の色。
「……判ったら、これ以上俺と関わるのはやめておけ。……幸い、キャラバンも山賊もいないようだ……このまま山を下るなり、エディックに戻るなり、好きにするがいい……」
 だが、それは一瞬だった。元通りに物憂げな瞳をルゥに向け、それだけを告げると、アティスは今やすっかり紅くなったマントを翻して踵を返した。その背中に突き刺さる視線が、少しずつ遠くなっていく。
 だが、その時不意にルゥが立ち上がった。
「じゃあ、どうしてあたしを助けたの?!」
 そして、叫んだ。涙でぐしゃぐしゃになった顔を隠そうともせず、ただその小さな身体から発されたそれは、魂の叫び。
「あなたは何なの?! どうして、どうしてあたしを助けてくれたの?!」
 それを受けて、アティスは足を止めた。そして僅かに身体を傾け、その顔を向けると。
「……俺はアティス。それ以外の何物でもない」
 それだけ言って、また背を向ける。
「勘違いするな……お前を助けたわけではない。俺は自分に降りかかった火の粉を振り払っただけだ」
 それきり、彼は何も言わなかった。そのまままっすぐ山道を下り始める。
 やがて、山脈西口の関所が見えた頃、彼は遠くに、少女の叫び声を聞いた。
「ばかああぁぁぁー! うわああぁぁぁん!!」
 夕焼けのグラスラク山脈に、少女の泣き声だけが響き渡った。
 空にそろそろ夜の女王が顔を出し始める頃合、いずれ翠緑に輝くその白い真円を振り返りながら、人でありながら人にあらざるもの、アティスは静かにつぶやいた。
「……弟に似ていたなどと……口が裂けても言えるものか」
 逢魔が時。闇が迫る破滅的な赤の中、そう呟いた彼の顔は、どこか穏やかだった。
 吟遊詩人達は、詩に詠む。

 人なりて人ならぬもの、邪なりて邪ならぬもの
 彼は天より堕ちて地に交わらぬもの
 嗚呼、彼は稲妻 空駆け星を流離う稲妻
 夜を満たせし光は赤く 世の隅あまねく轟き渡る
 嗚呼、彼は稲妻 人魔の別なく衝きし稲妻
 嗚呼、嗚呼、彼は赤光の稲妻――



◆アティス・イナート・スティル(Atys Inahrt Sthell)
星の世界中南部、イナート島の隠れ里出身。
レビック歴五百六十七年、不死鳥の輪一日生まれ。
膨大なマナ暴走事件で滅んだ隠れ里でたった二人の生き残り。生き別れの弟、のちの月の子を探して世界中を旅をした。
その過程で、魔族の祖、剣将軍アーサーにより魔性の剣を教えられ、新月の魔王シフォニアの兄弟子となる。
それと同時に、膨大な瘴気の摂取により魔族となる。同魔王シフォニアと同じく、魔族の黎明期において、人間から魔族になった稀有な二例のうちの一例。
レビック歴五百九十四年、星王トーカリウスの居城にて月の子と再会するが、直後に月王ネロリアスの凶刃にかかり、死亡。享年二十六歳。
その一生の大半は放浪の中にあり、歴史にその名はほとんど残っていない。
かろうじて、彼の関係者の日記などでわずかな記述を垣間見ることができるが、彼の死は邪神が封印される前、世界の安定期に入る前であるため、歴史上の重要人物との関係が深いにも関わらず、謎が多い人物。
今後の歴史研究において、もっとも新しい史料発見が望まれる人物の一人。

筆、コルファ・クレイアス





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